長調・短調の外にも音階があります。楽典で問われるのは、並びの特徴です。どれも「半音がどこに来るか」——あるいは来ないか——で性格が決まります。
2種類しかないのは、数えてみると分かります。ドから全音ずつ上がると ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯ の6音になり、この6つのどの音から始めても、出てくる音の顔ぶれは変わりません。残る6音(ド♯・レ♯・ファ・ソ・ラ・シ)がもう1組——12の音がちょうど2組に分かれて、それで全部です。
全音のへだたりしか無いため、どの音から始めても、音階に含まれる音の中身は2通りしかありません。導音が存在せず、完全5度も作れないので、終止のしようがない——それが浮遊感の正体です。ドビュッシーがこの音階で多くの曲を書いています。
ディミニッシュ・スケールは3種類しかありません。全音と半音の並びが短3度ごとに同じ形で繰り返すので、ドから始めた8音は、ミ♭・ソ♭・ラのどれから始めても同じ顔ぶれになります。始まりをド♯にずらすと2組目、レにずらすと3組目ができ、ミ♭まで行くと1組目に戻ります。
8つの音に、音名の文字は7つしかありません。だからこの音階はラ♭とラのように同じ文字が続く形になり、綴りは前後の文脈で変わります。長音階や短音階のように「1段に1文字」で書ける音階ではない、という点も特徴のひとつです。
「全音音階」と「全音階」は別の語です。全音階(ダイアトニック)は長音階・短音階のような7音の並びを指します。また全音音階の中では、譜面の上で減3度に見える2音のへだたりも全音(半音2つぶん)です。
五音音階は英語でペンタトニック・スケール(pentatonic scale)といいます。5を意味する penta から来た名で、ジャズやポピュラー音楽ではこちらの呼び方が普通です。
この5音は、完全5度を4回積み上げた音(ド・ソ・レ・ラ・ミ)を音高順に並べ直したものでもあります。離れた土地で同じ並びが現れるのは、いちばん単純な比の音程(完全5度)を重ねると自然にここへ行き着くからです。
五音音階は、1オクターブが5つの音でできている音階の総称です。いちばんよく知られているのは半音を含まない形で、長音階の第4音と第7音を欠いた形(ヨナ抜き)がそれにあたります。スコットランド民謡や日本の唱歌に広く見られる並びです。抜けているのは、長音階の中で半音を作っていた2音——だから半音が消えるわけです。同じ5音の並びは、中国・モンゴル・西アフリカ・アメリカのブルースなど、離れた土地の音楽にそれぞれ現れます。半音が無いので、どの音を重ねてもぶつからない——覚えやすく、外れにくい並びです。
五音音階のすべてが半音を持たないわけではありません。日本の陰音階(都節)は5つの音でできていて、半音を2箇所含みます。数えるのは音の数であって、半音の有無ではありません。
半音階の綴りは前後の文脈(調)で決まります。同じ鍵でも上行ではファ♯、下行ではソ♭と書くのが原則で、これは音の高さの問題ではなく、どちらへ向かっているかを読み手に伝えるための書き分けです。