Solfe

音階 5/7

教会旋法

長調・短調が定まる前のヨーロッパで使われていた音階を教会旋法といいます。白鍵の並びを、ド(ハ/C)以外の音から始めた形として覚えるのが早道です。使う音は同じでも、始まりの音が変わると半音の位置が動き、響きが変わります。

旋法の中心になる音を終止音(フィナリス)といいます。旋律は終止音を中心に動き、終止音で終わります。主音・属音・中音といった音度名は長調・短調の和声から生まれた呼び名なので、旋法の音は「第3音」「第6音」のように番号で呼びます。

7つの名前は、ドから順に頭文字だけ拾って「イ・ド・フ・リ・ミ・エ・ロ」とリズムで唱えて覚えます——イオニア・ドリア・フリギア・リディア・ミクソリディア・エオリア・ロクリア。ドレミファソラシドに重ねれば、どの音から始めた形かがそのまま出てきます。

EFGABC
白鍵だけでレ(ニ/D)からレまでたどると、ドリア旋法になります。始める音を変えるだけで、半音の位置が動きます。
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ドリア旋法。自然短音階と比べると第6音が半音高い並びです。
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フリギア旋法(ミから)。自然短音階と比べると第2音が半音低く、ミ–ファの半音で始まります。
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リディア旋法(ファから)。長音階と比べると第4音(シ)が半音高く、主音から増4度になります。
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ミクソリディア旋法(ソから)。長音階と比べると第7音(ファ)が半音低く、導音がありません。
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イオニア旋法(ドから)。長音階とまったく同じ並びです。ほかの6つは、この響きとの差で覚えます。
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エオリア旋法(ラから)。自然短音階とまったく同じ並びです。第7音が主音の全音下なので、導音がありません。
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ロクリア旋法(シから)。主音から第5音が減5度になる唯一の旋法で、主和音が減三和音になります。落ち着かないため、単独で使われることはまれです。
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イングランド民謡「グリーンスリーブス」の冒頭。ドリア旋法(レから)です。調号は♭1つでニ短調と同じですが、3小節目の色をつけたシに♮が付いています——この第6音が半音高いことがドリアの印です。この楽句は第5音のラで止まり、終止音のレで閉じるのは後半の楽句です。
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同じ旋律をニ短調(自然短音階)で。第6音のシに♭が付くだけで、ドリアの明るさが消えます。ここが旋法と短調の分かれ目です。
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同じ旋律を和声短音階で。第6音はシ♭のまま、第7音のドを♯に上げて導音にします。第6〜7音(シ♭–ド♯)が増2度に開いて、独特の響きになります。
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同じ旋律を旋律短音階(上行形)で。第6音のシも第7音のドも上げた形——ドリアの第6音に導音を足したものと同じ並びになります。3枚を続けて押すと、動いているのがこの2音だけだと分かります。

この曲では、終わりへ向かうところで第7音(ド)が半音上げられることがあります。ドリア旋法は第6音(シ)がすでに高いので、第7音も上げると同じ主音の旋律短音階と同じ並びになります。旋法から外れた音というより、そこから借りた音です。

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イギリス民謡「スカボロー・フェア」の冒頭。こちらもドリア旋法(レから)です。7小節目の色をつけたシが第6音——曲を通してこのシに♭が付くことは一度もありません。

この2枚は、ニ短調の楽譜と見分けが付かないことを見せるために調号を♭1つにしてあります。違いは♮の付いたシ1つだけです。旋法の曲をどう記譜するかは一通りではなく、調号を付けずに臨時記号だけで書くこともあります。どちらで書かれていても、調号だけ見て調を決めず、実際に鳴っている音を確かめる——旋法を見抜く手がかりはそこにしかありません。

旋法を書く課題は、全音と半音を1つずつ並べるより速い解き方があります。旋法は長音階の第何音から始めた形かが決まっているので、その音数ぶん下の長調の調号を付ければ、あとは主音から順に並べるだけです。

旋法長音階の調号にする長調
イオニア第1音主音と同じ
ドリア第2音長2度下
フリギア第3音長3度下
リディア第4音完全4度下
ミクソリディア第5音完全5度下
エオリア第6音長6度下
ロクリア第7音長7度下

「ファ(ヘ/F)から始まるミクソリディア旋法を書きなさい」なら、ミクソリディアは第5音から始まる形なので、その完全5度下=変ロ長調の調号(♭2つ)を付けます。あとはファから順に並べてファ・ソ・ラ・シ♭・ド・レ・ミ♭・ファ。半音の位置を数え直す必要がありません。

ハ長調の旋法(白鍵の並び)をいったん書いてから、主音が目的の音に来るまで全体を移調する方法もあります。こちらも確実ですが、親の長調から入るほうが手数が少なく、コードに対して使う音階を考えるときにそのまま応用できます——Dm7 にレ(ニ/D)のドリア、G7 にソ(ト/G)のミクソリディアを当てるのは、どちらも「ハ長調の第何音から始めるか」を言っているだけです。

この解き方は、旋法を「長音階を別の音から始めた形」ととらえているから成り立ちます。節の最初に書いた見かたが、そのまま計算になっているわけです。

旋法白鍵での主音特徴
イオニアド(ハ)長音階と同じ並び
ドリアレ(ニ)自然短音階の第6音が半音高い
フリギアミ(ホ)自然短音階の第2音が半音低い
リディアファ(ヘ)長音階の第4音が半音高い
ミクソリディアソ(ト)長音階の第7音が半音低い
エオリアラ(イ)自然短音階と同じ並び
ロクリアシ(ロ)自然短音階の第2音と第5音が半音低い

旋法の見分けかた

  1. 旋法を見分けるには、まず第3音を見ます。主音から長3度なら長旋法系(イオニア・リディア・ミクソリディア)、短3度なら短旋法系(ドリア・フリギア・エオリア・ロクリア)です。

  2. 長旋法系なら、次に第4音と第7音を見ます。第4音が高ければリディア、第7音が低ければミクソリディア、どちらでもなければイオニアです。

  3. 短旋法系なら、第2音・第5音・第6音を見ます。第5音が減5度ならロクリア、第2音が低ければフリギア、第6音が高ければドリア、どれでもなければエオリアです。

例題

C(ハ)を終止音とするドリア旋法の第3音は?

ジャズでは「F リディア」「G ミクソリディア」のように、音名を頭に付けて呼びます。これはその音を主音とする旋法という意味で、「ハ長調」と同じ言い方です。クラシックでは「リディア旋法」とだけ呼んで主音を文脈に任せることが多いので、頭のアルファベットを何かの記号だと思うと読めなくなります。

旋法は昔の音楽だけのものではありません。ドリアやミクソリディアはケルト・スペインの民謡やジャズに広く残り、リディアは映画音楽の浮遊した明るさによく使われます。長短調に収まらない響きが要るとき、いまも現役の語彙です。

覚えるのは「長音階・自然短音階とどこが違うか」です。7つを別々に暗記するより、既に知っている2つとの差で覚えるほうが確実に速く、忘れにくくなります。

練習問題

選択肢を押すと、正解と解説が表示されます。

A(イ)を終止音とするミクソリディア旋法の第7音は?

G(ト)を終止音とするリディア旋法の第4音は?

B(ロ)を終止音とするエオリア旋法の第3音は?

G(ト)を終止音とするフリギア旋法の第2音は?

A(イ)を終止音とするエオリア旋法の第7音は?

D(ニ)を終止音とするエオリア旋法の第7音は?

E♭(変ホ)を終止音とするドリア旋法の第6音は?

B♭(変ロ)を終止音とするリディア旋法の第3音は?

F♯(嬰ヘ)を終止音とするロクリア旋法の第2音は?

F♯(嬰ヘ)を終止音とするドリア旋法の第3音は?

B♭(変ロ)を終止音とするドリア旋法の第6音は?

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