日本の音楽には、長調・短調とは別の音階があります。どれも五音でできていて、半音をどこに置くか(あるいは置かないか)で性格が分かれます。耳になじんだ響きの多くは、ここに理由があります。代表的なのは、半音を含まない陽音階(田舎節)と、半音を2つ含む陰音階(都節)、そして沖縄の琉球音階です。
陽音階(田舎節)。レ・ミ・ソ・ラ・ドの5音で、半音を1つも含みません。民謡や童謡に広く使われます。
Engraved by Verovio 6.1.0-682d606
陰音階(都節)。ミ・ファ・ラ・シ・ドの5音で、半音が2箇所(ミ–ファ、シ–ド)入ります。江戸時代の三味線や箏の音楽に使われ、「日本的」と感じる響きの多くはこれです。
陽と陰は、半音があるかないかで対になっています。同じ5音でも、半音を含むだけで音の表情がここまで変わる——押し比べると、名前より先に耳で分かります。
Engraved by Verovio 6.1.0-682d606
琉球音階(沖縄音階)。ド・ミ・ファ・ソ・シの5音で、レとラを抜いた形です。長3度が2箇所あって、沖縄の民謡やそこから生まれたポピュラー音楽でおなじみの響きになります。
雅楽の律音階は、上行がレ・ミ・ソ・ラ・ドで陽音階と同じ並びですが、下行はレ・シ・ラ・ソ・ミとシを通ります——上りと下りで形が変わる音階です。
Engraved by Verovio 6.1.0-682d606
律音階。上行(左)と下行(右)で通る音が違います。上りのドが、下りではシになります。
上りと下りで形が変わるのは、旋律短音階と同じしくみです(→ 短音階の節)。音階は「音の集合」ではなく「どう動くか」まで含んだ形だ、ということがここに出ています。
雅楽にはもう1つ呂音階があります。呂音階はド・レ・ミ・ソ・ラ——長音階のヨナ抜きとまったく同じ並びです。中国から伝わったのは呂音階でしたが、雅楽が日本化した平安時代からは律音階だけが使われるようになり、呂音階は理論の上の存在にとどまりました。