長音階や短音階が特定の音を主音にとると、特定の調ができます。調の名前は「主音の音名+長調・短調」です。ド(ハ/C)を主音とする長音階の調はハ長調、ラ(イ/A)を主音とする短音階の調はイ短調です。
調名は日本音名で呼びます。「ドの長調」とは言いません。音そのものを指すときはドレミで、調を指すときはハニホで——この使い分けは日本の楽譜と教室の標準です。
音階を型に合わせるための♯や♭を、曲の頭にまとめて書いたものが調号です。「調性記号」と書かれることもあります。調号は五線の決まった位置に書かれ、同じ名前の音ぜんぶに、オクターブを問わず効きます。曲の途中で書き換えられるまで、最後まで効き続けます——ここが臨時記号(その小節のあいだだけ)との大きな違いです。
2つを見比べると、調号の役目がはっきりします。調号は新しい音を作っているのではなく、繰り返し書くはずの記号を先にまとめているだけです。読む側にとっても、曲の頭を一目見れば「この曲ではファとドとソとレが高い」と分かる——調号は曲全体の前提を1箇所で宣言する仕組みです。
| 調号 | 長調 | 短調 |
|---|---|---|
| なし | ハ長調 | イ短調 |
| ♯1 | ト長調 | ホ短調 |
| ♯2 | ニ長調 | ロ短調 |
| ♯3 | イ長調 | 嬰ヘ短調 |
| ♯4 | ホ長調 | 嬰ハ短調 |
| ♯5 | ロ長調 | 嬰ト短調 |
| ♯6 | 嬰ヘ長調 | 嬰ニ短調 |
| ♯7 | 嬰ハ長調 | 嬰イ短調 |
| 調号 | 長調 | 短調 |
|---|---|---|
| ♭1 | ヘ長調 | ニ短調 |
| ♭2 | 変ロ長調 | ト短調 |
| ♭3 | 変ホ長調 | ハ短調 |
| ♭4 | 変イ長調 | ヘ短調 |
| ♭5 | 変ニ長調 | 変ロ短調 |
| ♭6 | 変ト長調 | 変ホ短調 |
| ♭7 | 変ハ長調 | 変イ短調 |
調号から調名を出す
調号から調名を即答するには、♯系なら「いちばん右の♯の短2度上」が長調の主音です。♯4つなら右端はレ♯(嬰ニ)、その短2度上のミ(ホ)が主音——ホ長調です。
♭系なら「右から2番目の♭」がそのまま長調の主音です。♭3つなら右から2番目はミ♭(変ホ)——変ホ長調です(♭1つだけはヘ長調と覚えます)。
短調は、同じ調号の長調の短3度下です。♯1つならト長調の短3度下でホ短調です。
例題
この調号の長調は何ですか?
正解: 変ロ長調(B♭ major)
この調号は♭2つで、長調は変ロ長調(B♭ major)です。♭はシ・ミ・ラ・レ・ソ・ド・ファの順に増えます。最後から2番目の♭が長調の主音になります。
表の上下を見比べると、♯系と♭系はきれいに対称です。♯が増えると主音は完全5度ずつ上がり、♭が増えると完全5度ずつ下がります。ハ長調を真ん中に置いて、両側へ5度ずつ伸びている——この形をそのまま円にしたのが、あとで出てくる五度圏です。
同じ調号の並びでも、ロ長調と変ハ長調のように、実際の高さが同じで名前だけ違う調があります(異名同音調・3組ずつ)。そのため、名前の上では長調15・短調15ありますが、実際の高さは長調12・短調12です。
調号は曲の頭に、音部記号のすぐ右に置かれます。ベートーヴェンの〈月光〉は♯4つ——ホ長調か嬰ハ短調で、この曲は嬰ハ短調です。調号だけでは長短が決まらないので、曲の始まりと終わりの音を見て判断します。