Solfe

楽器と響き 4/4

純正律と十二平均律

人の耳は、2つの音の振動数が簡単な比になっているほど協和して感じ、複雑な比になっているほど不協和に感じます。協和音程と呼ばれるものは、次のような比になっています。

振動数の比音程
1対2完全8度
2対3完全5度
3対4完全4度
4対5長3度
5対6短3度
3対5長6度
5対8短6度

比は「2対3」とも「3/2」とも書きます。どちらも同じことで、分数のほうは「下の音の振動数を何倍すると上の音になるか」を表しています。この節では両方の書きかたが出てきます。

この純正な音程だけで音階を組み立てる方法が純正律です。ハ長調で作ると、主音の振動数を1としたとき各音は 9/8倍・5/4倍・4/3倍・3/2倍・5/3倍・15/8倍・2倍になります。主要三和音(I・IV・V)はどれも 4対5対6 の純正な長三和音になります。

純正律の長所はここです。主音に対して各音が純正な協和音程になっているので、平均律では得られない澄んだ響きが出ます。

ところが欠点があります。上の音階で隣り合う音の比を見ると、ドとレの長2度は 9/8、レとミの長2度は 10/9——同じ長2度なのに2種類あるのです。レとラの5度も 40/27 になり、完全5度の 3/2 とは違います。

これが何を意味するか。ハ長調に合わせて調律した楽器では、ニ長調の曲は主和音からして濁ります。ハ長調の曲をニ長調へ移調しても正しく鳴りません。同じ調の中でも、副三和音を使うところで同じことが起こります。ある調のために調律した楽器は、ほかの調では使えない——これが純正律の限界です。

そこで生まれたのが十二平均律です。1オクターブを12の等しい音程に分け、それを半音と定めた調律を十二平均律といいます。半音2つを全音とし、すべての音程を半音の積み重ねとして扱います。

平均律では増1度と短2度がどちらも半音、短3度と増2度がどちらも半音3つになります。楽典で区別するこれらの音程が、鍵盤の上では同じ幅になるのはこのためです。

どの調を弾いても同じ響きが得られるのが平均律の長所です。欠点は、半音の比が 12回かけて2になる数——およそ 1.05946 という無理数になることで、オクターブ以外はどの音程も純正な3対2 や 5対4 には決して一致しません。ただしそのずれはどの音程でもほぼ均等に小さいので、利点のほうが勝りました。

1オクターブを1200等分した単位をセントといいます。半音1つが100セントです。

長三和音で3つの音律を比べると、違いがはっきりします。主音を0セントとしたときの、第3音と第5音の高さです。

音律長3度完全5度
純正律386セント702セント
平均律400セント700セント
ピタゴラス音律408セント702セント

完全5度はどの音律でもほとんど同じですが、長3度は22セント——半音の4分の1近く違います。平均律の長三和音が純正律よりわずかに濁って聞こえるのは、この第3音のずれのせいです。実際にはうなりとして聞こえます。

平均律
純正律
同じ長三和音を、2つの音律で鳴らします。平均律のほうは、伸ばしているあいだ音が細かく震えます——1秒に約10回。根音のドから数えて5番目の倍音と、第3音のミから数えて4番目の倍音が、少しずれた高さでぶつかっているからです。純正律ではこの2つがぴったり重なるので、震えが消えます。

平均律では、ド♯(嬰ハ)とレ♭(変ニ)のように綴りの違う音が同じ高さになります。異名同音の扱いが要るのはこのためです。

ただし、調のはっきりした曲では、記譜は必ず音階の音に沿って行います。勝手に異名同音へ置き換えてはいけません。ハ長調の音階を書くのに、ミをファ♭(変ヘ)、シをド♭(変ハ)と書くのは誤りです。鍵盤で同じ高さでも、五線の上では別の音です。

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