旋律の音が、そのとき鳴っている和音の構成音とは限りません。和音に属さない音を非和声音といいます。楽譜では珍しいものではなく、旋律に動きを与えるために書かれます。
種類は「どう入って、どう抜けるか」で決まります。拍の強さでは決まりません。
| 名まえ | 入りかた | 抜けかた |
|---|---|---|
| 経過音 | 順に | 同じ方向へ順に |
| 刺繍音 | 順に | 元の音へ戻る |
| 倚音 | 跳んで | 順に解決する |
| 逸音 | 順に | 跳んで抜ける |
| 掛留音 | 前の和音の音が残る | 順に解決する |
| 先取音 | 次の和音の音を先に鳴らす | そのまま次の和音へ |
6つとも譜例で見ます。どれも下の譜表にハ長調の主和音(ド・ミ・ソ)が鳴っていて、上の旋律のうち色をつけた音がその3つに含まれない音です。押すと和音と旋律が一緒に鳴るので、ぶつかって解決する感じが耳でも分かります。
非和声音を見つける
そのとき鳴っている和音の構成音を書き出します。ハ長調の主和音ならド・ミ・ソの3つです。
旋律の音を1つずつ照らし合わせ、その3つに無い音を探します。それが非和声音です。
見つけた音の前後を見ます。入りかたと抜けかたの組み合わせで、上の表のどれかに決まります。
例題
次の楽譜で色をつけた音は、何と呼ばれる非和声音ですか?
正解: 経過音
伴奏は長三和音(根音 C)で、旋律は C4 → D4 → E4 と動きます。前後の音は和声音ですが、色をつけた音は和音に属しません。この音は順次進行で入り、同じ方向へ順次進行で抜けるので経過音です。非和声音の種類は、どう入ってどう抜けるかで決まります(拍の強さではありません)。
見つけるこつは、旋律より先に和音の変わり目を押さえることです。和音が鳴っている区間を区切ってしまえば、その区間の中で構成音に無い音は自動的に非和声音になります。
和音に無い音が現れても、書き間違いではありません。非和声音は書かれるべくして書かれています。
掛留音だけは3つの段階でできています。前の和音でその音が和声音として鳴っているところが予備、和音が変わってもそのまま残っているところが掛留、そこから順に動いて和声音になるところが解決です。予備を持たないものが倚音で、そのため予備なき掛留とも呼ばれます。
ある声部が主音または属音を鳴らしつづけ、その上で和音だけが変わっていくこともあります。この持続する音を保続音といい、非和声音のなかでも典型的なものです。低い声部に置かれるものは低音保続音といい、オルガン点・ペダル点とも呼ばれます。それ以外の声部にあるものは単に保続音です。
刺繍音は補助音・隣音ともいいます。上と下の刺繍音が続けて現れることもあり、連続刺繍音と呼ばれます。倚音にも同じように連続の形があります。
非和声音がいくつも重なって、その場かぎりの和音の形に見えることがあります。これを偶成和音といい、独立した和音としては扱いません。何の非和声音でできているかで、補助和音・倚和音・掛留和音と呼び分けます。
拍の強いところに置かれやすいのは倚音と掛留音ですが、種類を決めるのは拍の位置ではありません。入りかたと抜けかたが同じなら、強拍でも弱拍でも同じ名で呼びます。
実際の曲では、非和声音は旋律の流れの中に自然に現れます。モーツァルトのソナタの冒頭では、右手の音階的な動きの中に和音に属さない音が混じっています。