楽句の切れ目に置かれる和音の進み方を終止といいます。どの和音からどの和音へ進むかで、終わった感じの強さが変わります。
属和音から主和音へ進むことを正格終止といい、全終止とも呼びます。完全終止と不完全終止は、その正格終止を条件で分けた呼び名です。
全終止と完全終止は別の語です。全終止は主和音で終わったことを言い、半終止と対になります。完全終止はその終わり方がいちばん完全な形かを言い、不完全終止と対になります。「V から I へ進む終止」だけでは完全終止の説明になりません。
| 終止 | 和音の進み |
|---|---|
| 完全終止 | 属和音から主和音へ。基本形・強拍で、最上声が主音 |
| 不完全終止 | 属和音から主和音へ。条件が欠ける |
| 変格終止 | 下属和音から主和音へ |
| 偽終止 | 属和音から主和音以外へ。多くは下中音の和音 |
| 半終止 | 属和音で止まる |
終わった感じがいちばん強いのは完全終止です。不完全終止は終わるものの少し軽く、変格終止は穏やかに収まります。半終止だけは終わらず、続きを予感させます。
5つとも音で確かめます。同じ和音でも、どれを最低音に置くか(=転回形)と、いちばん上の声部が何の音かで呼び名が変わります。押して、終わった感じの強さを聴き比べてください。
偽終止は、属和音まで来ておきながら主和音へ行かない形です。主和音の代わりに下中音の和音へ進むものがほとんどで、終わると思わせておいて外すため、曲はそのまま続きます。
終止を見分ける
最後の和音の根音を見ます。それが主音なら主和音です。主音でなければ主和音へ行かなかったので、前が属和音なら偽終止です。
その前の和音の根音を見ます。完全5度上なら属和音、完全4度上なら下属和音です。属和音なら正格終止、下属和音なら変格終止です。
正格終止のときは、2つの和音がどちらも基本形か、いちばん上の声部が主音かを見ます。両方そろえば完全終止、どちらかが欠ければ不完全終止です。
例題
次の楽譜(曲の終わり)で色をつけた2つの和音による終止は何ですか?
正解: 完全終止
最後の和音は C を根音とする長三和音(主和音)で、その前は完全5度上の和音=属和音です。V から I へ進むのが正格終止で、両方の和音が基本形で、いちばん上の声部が主音 C なので完全終止です。最後の和音が長三和音なので、この曲はハ長調で終わります。
属和音が「まだ続く」と感じさせるのは、その中に導音が含まれているからです。導音は主音の半音下にあり、主音へ上がろうとする力を持ちます。属七の和音ではさらに第7音が加わり、下がって解決しようとする力も働きます。
終止は曲の終わりだけに現れるものではありません。楽句の切れ目にも置かれ、そこでは半終止が多く使われます。
短調の曲で、下属和音から属和音へ進む半終止をフリギア終止といいます。中世のフリギア旋法による終止で、長調の曲でも使われます。
短調の曲の最後では、主和音の第3音だけを半音上げて長三和音にすることがあります。この第3音をピカルディの3度といい、短三和音では終わった感じが足りないという理由で用いられます。
最後の和音が主和音でも、最上声が主音でなければ完全終止とは呼びません。耳で聞くと終わって聞こえるので、答えるときは譜面のいちばん上の音を必ず確かめます。
実際の曲の終わりを見てみます。アリアーガの弦楽四重奏曲第1番ニ短調の最後です。チェロが A から D へ——属音から主音へ動き、上の3声も属和音(A・C♯・E)から主和音(D・F・A)へ解決します。この動きが3回繰り返され、最後は主和音を伸ばして終わります。いちばん上の声部が主音 D で終わり、両方の和音が基本形なので、完全終止です。